遥か昔。
大陸には数多の国々が存在し、
人々は木・火・土・金・水の五つの性質による法術を用いて国を治めていた。
しかし、時代の流れと共に法術を使える者も減っていき、法術は万能の力ではなくなっていった。
法術の力に陰りが見え始めたころ、
大陸に散らばる大小の国々を一つにまとめ、新たな国家が成立した。名を「黎」という。
法術に頼っての統治を危ぶんだ時の皇帝により、法術に頼ることなく国を治める術が見出された。
すなわち、有能なる官吏による、官僚制での国家統治である。
大国となった黎を支える官僚たちは、
「科試」と称される難関国家試験を突破し、晴れて国家の礎となった者である。
法術の才を持つ者も持たざる者も、男女も貧富も問わず、才覚と実力こそが官吏の条件である。
国の統治は神秘の法術によるものではなく、培われた知恵によるものへと変わっていった。
時は流れ、建国150年。文化の華は大きく開き、黎国は最盛期を迎えようとしていた。
官吏の質をより高く維持すべく、皇帝の命により設立された「明楊院」。
官吏を志し、科試を受けんと欲する者全てに入学の権利があり、また、入学を義務とする学び舎である。
国立の官吏養成学校。入学時点で、各々が将来文官を志すか武官を志すかは決めておく。三年制。
生徒は「学士」と称され、それぞれ「学部」という専門課程に所属する。
専門課程は「木部」「火部」「土部」「金部」「水部」の五学部に分かれる。
各学年で学ぶこと
第一学士…官吏としての教養の基礎を学ぶ。知識を幅広く身につけ、次年度以降に自身が進む道を見定める。
第二学士…専門的な教養を深く身につける。各行事等の企画・運営の主となる。
第三学士…「科試」受験資格を得るための試験勉強に向け、己を磨く。各行事・授業において後輩の指導を担うことも。
専門課程について
専門課程は「木部」「火部」「土部」「金部」「水部」の五学部に分かれる。
第一学士では学部を問わずに広く基礎的学問を身につけるが、
特に第二学士以降は、所属の学部ごとにより専門的な教育を受けることとなる。
また、第二学士以降は各々の所属する学部に応じた色の「佩玉」を身に着けなければならない。
木部(武官) …戦略の立案・兵器の開発を主とする。軍師を志す道。
火部(武官) …武芸を修めることを主とする。将を志す道。
土部(侍従官)…高い学識と人格を修めることを主とする。皇帝の側近を志す道。
金部(文官) …治水と法を修めることを主とする。行政を担うことを志す道。
水部(文官) …教育・祭礼を修めることを主とする。歴史書の編纂、記録等を担うことを志す道。
古より伝わる、「自然界の木・火・土・金・水の力を知り、力を借り、力を与える」術を法術という。
法術を扱う能力(以下、「法力」)を発現させた者を、総じて「法術士」と称する。
黎国においては万民が法力の才を持つ。
しかし、生まれつき法力を発現させるものもいれば、発現させずに一生を終える者もいる。
法術には、木・火・土・金・水の五つの性質があり、それぞれの性質は互いに干渉しあう。
法術の基本的性質
木 …樹木の着実に成長・発育する性質を表す。人においては、愛情が深く優しい性格。
火 …炎の光り輝く灼熱の性質を表す。明るく、人においては、明るく好奇心が旺盛な性格。
土 …大地の万物を育み保護する性質を表す。人においては、冷静で物事に動じない性格。
金 …金属の冷徹で堅固な性質を表す。人においては、決断力、行動力に優れた性格。
水 …水の潤しながら流れゆく性質を表す。人においては、おおらかで柔軟な性格。
法術士にできること
法術は思うがままに自然を扱う力ではない。いつ何時でも人<自然であり、人は自然の一部である。
よって、法術士は法術を万能とは考えず、問題を解決するための一助として心得るものである。
法術使用例
可能
・自然の動きを察知する。(例:大気中の水の気配から、雨の降る時間・場所・規模を察知する。)
・自然の気を集めて、出現させる。(例:周囲にある水の気を集め、出現させる。)
・自然の性質を理解する。(例:水に触れることで、その水質を理解する。)
・自然への適切な関与を知る。(例:木に触れることで、その木に与えるべき水の量を知る。)
不可能
・自然の動きそのものを変える。(例:降り出した雨を止める。)
・完全な「無」から生み出す。(例:渇ききった場所に水を出現させる。)
・自然の性質を変化させる。(例:水質を変える。)
・自然そのものを操る。(例:木の中にある水分を調節し、思うままに成長させる。)
※人にできることは限られています。自然の摂理を変えることはできません。
だからこそ、知恵を使って国を治めることが大切なのです。
明楊院における法術士
学部の所属は他の生徒と同じく木・火・土・金・水の五学部である。
しかし、「自然界の木・火・土・金・水の力を知り、力を借り、力を与える」という法術の特質を生かした官吏となるべく、
法術士のみを対象とする特別授業(志願制)が実施されている。
官吏としての法術士
法術の特性を生かし、「監察使」という役職を与えられる機会がある。
監察使とは、各地域に実際に赴いて現地の様子及び政治を視察・監督すると共に、
その土地の自然界の巡りを中央に報告する役職である。
役職の特性上、極秘裏に隠密・諜報の活動を行う者もいる。